婿入りとは?
婿入りについて妻側の苗字を名乗ることは知っていても、婿養子との違いについてわからない人もいるでしょう。ここでは、婿入りについて詳しく解説するとともに、婿養子の違いも紹介します。
妻側の苗字を名乗ること
婿入りとは、ふたりで新しく戸籍を作る際に夫が妻側の苗字にすること。結婚後は夫が妻の苗字を名乗ります。単純に、夫と妻との間だけに生まれる婚姻関係です。
婿養子との違い
婿入りと婿養子は全くの別物です。婿養子は、妻と夫が婚姻関係を結ぶのに加え、妻側の親と夫が養子縁組を行うことを指します。これにより、妻の親と夫が法律上では親子の関係となります。
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手続きに必要な書類 |
扶養の必要性 |
相続の可否 |
婿入り |
婚姻届のみ |
なし |
できない |
婿養子 |
婚姻届・養子縁組届の2つ |
あり |
できる |
ただし、夫が婿養子になったとしても実父、実母との関係性は変わりません。
【手順】婿入りする際の流れと必要な手続き
次に、婿入りする際の流れについて解説します。どのような手順で物事を進めるのか、必要な手続きは何なのかをチェックしてくださいね。
①親への報告
ふたりの間で結婚の意思が固まったら、まずはその旨を両方の親へ報告します。通常の結婚では夫側・妻側の順で自宅を訪問しますが、婿入りは先に妻側の自宅を訪問するのが一般的です。何らかの事情によってこの順番で行けない場合は、あらかじめ理由を説明しておきましょう。
報告の挨拶に行くのは、基本的にはふたりの実家です。実家に行くのが難しければ、実家の近くにあるお店を予約するなどして、結婚報告の場を設けてください。
②結納
結納とは、ふたりの婚約を成立させるための儀式のことです。結納金や結納品の受け渡しによって、婚約が成立します。通常は夫側から妻側へ贈りますが、婿入りはその逆で妻側から夫側へ結納金や結納品を送り、夫側は妻側へ結納返しをします。
結納金の全国平均は98.4万円(ゼクシィ 結婚トレンド調査2021調べ)で、キリの良い数字である100万円が相場です。しかし、婿入りの一般的な結納金は通常の2~3倍、つまり200万円~300万円と言われています。
最近では、結納そのものをしない人が増えています。結納をする場合は結納金の受け渡しや金額を、あらかじめ両家で話し合うことが大切です。
③婚姻届の提出
婚約が成立したら婚姻届けを提出します。婚姻届と養子縁組届を提出する婿養子とは異なり、婚姻届のみで構いません。
婚姻届の書き方は通常の結婚の場合とほとんど同じですが、婚姻届の中にある「婚姻後の夫婦の氏」の欄で「妻の苗字」を選びます。そして、婚姻届を出すことで夫婦ふたりの新しい戸籍が作られ、晴れて夫婦に。なお、妻側の苗字を選ぶと戸籍上の筆頭者は妻となります。
婿入り婚のメリット・デメリット
婿入りを検討する上で押さえておきたいのが、婿入り婚のメリットとデメリット。これらを踏まえた上で、嫁入りにするのか婿入りにするのかをじっくり考えましょう。
【メリット①】嫁姑問題が起こりにくい
婿入りすれば、夫側の親が妻側に口を出すことが減るため、世間的に言われる嫁姑問題が起こりません。夫は妻と姑の間に挟まれずに済み、嫁姑問題によるストレスがなくなるでしょう。一方妻も、夫側の親に気を遣ったりプレッシャーを感じたりすることを避けられます。
【メリット②】婿入りしても、妻側の親を扶養しなくて良い
婿入りは苗字こそ変えますが妻側の戸籍には入らないため、妻の親を扶養する必要もなければ、妻の親への仕送りやお世話などをする必要もありません。難しい問題ですが、もし妻側の親が介護の必要な状態になったとしても、断ることが可能です。
婿入りの場合は特に背負うものがないため、婿養子に入るよりも気持ちが楽なのではないでしょうか。
【メリット③】妻側の家から歓迎してもらえる
婿入りだと、夫は妻側の家に迎え入れてもらいやすくなります。妻側が一人っ子、女姉妹しかいないなどが理由の場合、夫が長男のような存在になるため歓迎してもらえるでしょう。
嫁入りするのが一般的な形であるため、婿入りは妻側からすると嬉しいことであるに違いありません。妻からはもちろん、妻の親や家族からも大切にされるはずです。
【デメリット①】名前変更の手続きが必要
婿入りすると、妻が名前変更をする必要がなくなる代わりに、夫が名前を変更する必要があります。運転免許証、銀行の名義、クレジットカードなど、さまざまな書類において名前の変更手続きをしなくてはいけません。婿入りして夫の苗字が変わる場合は、どのような変更手続きが必要か、事前に知っておいた方が良いでしょう。
【デメリット②】妻の親の遺産を相続する権利がない
婿入りだけでは、妻側の親の遺産などを相続する権利は得られません。基本的に、遺産を相続するには妻側の親と養子縁組を行うことが必要です。
養子縁組を行うと、相続権が与えられると同時に妻側の親の扶養義務も発生します。ただし婿入りであっても、親の遺言に夫にも相続させる旨が記載されていれば、相続が可能です。
【デメリット③】妻側の家族との関係性に悩む
婿入りすると、妻と夫側の親との間で発生する嫁姑問題は解消されます。しかしその代わりに、夫が妻側の親と良好な関係を築こうと気を遣うことで、関係性に悩む可能性が考えられます。気疲れしない程度に、妻側の親とちょうど良い距離感を取るようにしましょう。
婿入りする際の注意点
最後に、婿入りする際に把握しておくべき注意点について解説します。婿入り後、お互いの親と良好な関係を築くためにも、以下の注意点に気を付けましょう。
婿入りなのか婿養子なのかをはっきりさせておく
大前提として、婿入りなのか婿養子なのかをはっきりさせておくことが大切です。婿入りと婿養子は似たものであるかのように思われがちですが、全くの別物。婿養子は妻側の親の養子になるため、背負うものが変わってきます。しっかりと話し合いをして決断しましょう。
夫の親に対して、婿入りすることを理解してもらう
婿入り婚はまだまだ珍しく、「結婚=お嫁さんが来る」と思われていることが一般的です。もし、婿入りするのであれば、夫側の親にしっかり理解してもらうことが大切です。両方の親に結婚を祝福してもらうためにも、なぜ婿入りするのかに併せて必要な手続きや変更点なども説明し、理解を得てくださいね。
夫が、妻の親・家族のことを理解する
婿入りは妻側の家に入るため、妻の親や家族、家のことをしっかり理解する必要があります。併せて、妻の家がある地域の風習などについても知っておくのも大切です。妻の家族との距離感が縮まり、早くなじめるでしょう。
婿入りとは何か理解し、結婚の形についてパートナーと話し合おう
婿入りを検討しているのであれば、婿養子との違いやメリット・デメリットを理解することが大切。幸せな結婚生活を送るため、妻側の家族との良好な関係を築くためにも、婿入りに関する理解を深め、パートナーと時間をかけて話し合いましょう。
※本記事内で記載しているデータは、「ゼクシィ 結婚トレンド調査2021調べ」を基に記載しています。